平成26年 改正特許法 -救済規定の拡充-

 救済措置の拡充の改正は、次に示す二種類に大別される。 

  • 不責事由に対する救済手続の整備
  • PLTとの整合に向けた手続整備

 以下、

 第1話「不責事由に対する救済手続の整備」

 第2話「特許法条約(PLT)との整合に向けた救済手続の整備」

として説明する。


 第1話 いわゆる不責事由に対する救済手続の整備

 不責事由、つまり責に帰することができない理由については、例えば特許法第121条第2項などに昔から規定がある(以下、特許法の条文については「特許法」の表記を省略する)。

 

 しかし多くの手続については明文化されていない。このため東日本大震災の際には、「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」に基づき、東日本大震災を「特別非常災害」として政令指定し、必要な延長措置を講じたという経緯がある。
 つまり現行法では、災害発生時などに逐一政令指定手続が必要となるのである。
 しかも海外での災害には対応していない。 

 

 そこで今回、不責事由の発生時に救済措置を必要とする手続の範囲を拡大し、迅速な救済を図り得るようにした。

 具体的には、次の手続について不責事由による救済を認めることにした。

 

  • 新規性喪失の例外適用を受けるための証明書(第30条第4項、実意商準用)
  • パリ条約上の優先権主張のための優先権証明書(第43条第6項、実意商準用)
  • 特許査定/拒絶査定後の分割出願(第44条第7項
  • 実用新案登録出願/意匠登録出願からの出願変更(第46条第6項、実意準用)
  • 実用新案登録に基づく特許出願(第46条の2第3項)
  • 延長登録出願(第67条の2の2第4項)
  • 特許料の納付(第108条第4項、実意商準用)
  • 既納の特許料の返還(第111条第3項、実意商準用)
  • 手数料の返還(第195条第13項、実意商準用)        ……など

 

 手続きが可能な期間は、いずれも理由がなくなった日から14日(在外者は2月)以内で、その期間の経過後6月以内である。

 もっとも延長登録出願の不責事由による在外者の手続き可能期間は、理由がなくなった日から2月ではなく、1月である点に留意されたい(第67条の2の2第4項)。

 

 なお不責事由、つまり責に帰することができない理由として認められるのは、天変地異以外にもいくつかある。審判便覧26-03は、二つの学説「払うべき万全の注意を十分に尽しても、これを避けることができないと認められる事由(兼子 条解民訴)」「期間を遵守することができなかったことに過失がないこと(萼 条解工業所有権法)」を具体例と共に紹介し、さらに裁判例及び審決例をいくつか紹介している。