1.審判官の指定
(1)合議制
特許異議の申立てについての審理又は決定は、三人又は五人の審判官の合議体が行う(第114条第1項)。合議は過半数により決する(第116条で準用する第136条第2項)。
特許庁長官は、合議体を構成すべき審判官を指定しなければならない(第116条で準用する第137条)。
特許庁長官は、審判官のうち一人を審判長として指定しなければならない(第116条で準用する第138条)。
(2)除斥又は忌避
審判官については除斥規定がある(第116条で準用する第139条)。当事者又は参加人は、除斥の申立をすることができる(第140条)。
審判官については忌避規定もある(第116条で準用する第141条)。
除斥又は忌避の申立(第116条で準用する第142条)、決定(第143条)、決定があるまでの中止(第144条)について規定されている。
2.審判書記官の指定
(1)審判書記官
特許庁長官は、特許異議申立事件について審判書記官を指定しなければならない(第117条第1項)。
(2)故障、役割、除斥又は忌避
審判書記官については、故障、役割、除斥又は忌避の規定が準用されている(第117条第2項で準用する第144条の2第3項から第5項)。
3.方式等のチェック
(1)方式違背
特許異議申立書に方式違反があった場合、審判長は補正命令を発し(羈束行為)、是正されなければ、決定をもってその手続を却下することができる(第120条の8第1項で準用する第133条第1項~第3項)。
この却下決定については訴えを提起することができ、この場合の裁判管轄は東京高等裁判所(知的財産高等裁判所)となる(第178条第1項)。
(2)補正により回復されない不適法な手続
審判長は、不適法な手続であってその補正をすることができないものについては、弁明の機会を与えた後、決定をもってその手続を却下することができる(第120条の8第1項で準用する第133条の2)。
(3)尋問
審判長は、当事者又は参加人を尋問することができる(第120条の8第1項で準用する第134条第4項)。
(4)補正により回復されない不適法な申立て
不適法な特許異議の申立てであってその補正をすることができないものについては、答弁書を提出する機会を与えることなく、審決却下が可能である(第120条の8第1項で準用する第135条)。
この却下処分については、不服を申し立てることができない(第120条の8第2項、第114条第6項)。
4.関係者への連絡と公衆への周知
(1)特許異議申立書の副本の送付
特許権者には、特許異議申立書の副本が送付される(第115条第3項)。
これは審判長の羈束行為であるため、審判官の指定を待って行われる(第116条)。申立てがあった後、相当の期間が経過した後に行われることになるであろう。
(2)利害関係人への通知
特許異議の申立てがあったことは、特許権についての専用実施権者その他その特許に関し登録した権利を有する者にも通知される(第115条第4項で準用する第123条第4項)。参加の機会を与えるきっかけとするためである。
これも審判長の羈束行為であるため、申立て後直ちに行われるのではなく、相当の期間が経過した後に行われることになるであろう。
(3)特許公報への掲載
特許異議の申立てがあったことは、広く一般に周知させるために、特許公報に掲載される(第193条第1項第6号)。